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2011年6月29日

ウイルスが起こす白血病(ATL)

成人T細胞性白血病(ATL)という病気をご存知でしょうか。
血液のがんの多くは原因がはっきりわかっていませんが、ATLはヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)というウイルスによって起こることがわかっています。
しかし、このウイルスに感染した人全員がATLを発症するわけではなく、発症するのは感染者の2~5%の確率です。
HTLV-Iに感染しても大部分の人はATLを発症せず、体内にウイルスを持っているだけの状態(キャリア)で一生を送ります。キャリアがATLを発症する時の平均年令は60歳、つまりHTLV-Iに感染してから発症するまでには数十年という長い潜伏期間があるのです。
ATLの治療は他の血液がんと同様に抗がん剤治療が行われます。
しかし、これまでなかなかいい治療法がありませんでした。しかし、最近では骨髄移植や臍帯血移植という治療がおこわなれるようになり、比較的若い患者さんにはこの治療が行われています。とはいえATLはまだまだ治療が難しい病気です。発症してからの治療はもちろん大切ですが、発症する可能性がある人、すなわちHTLV-Iキャリアを減らすことも大切です。
HTLV-Iの感染経路は主に3つです。
1.母乳や胎盤を通じた母子感染
2.性交渉による感染
3.輸血などの血液を介する感染です。
この中で最も重要な感染経路は母乳ですが、HTLV-Iキャリアの母親の母乳を止めればHTLV-I感染が100%予防できるかというと、そうとも限りません。
母乳によるHTLV-I感染の可能性を少しでも少なくするため、3ヶ月以内の短期授乳や母乳を一旦凍らせ解凍してから授乳するといった工夫も試みられています。
現在、福岡県では妊婦さん全員HTLV-Iの検査は行っています。わからない事がありましたらいつでも質問されてください。